サステナブル・ツーリズム(Sustainable Tourism)とは何か?

サステナブルの意味は持続可能、
つまりサステナブル・ツーリズムは観光をすることで地域の自然環境や文化、経済に悪影響を与えることなく、むしろその価値を高め、これから先も持続可能な観光のことをいいます。

具体的には、次の3つの要素のバランスが重視されています。
① 環境の保全
自然景観や生態系への負荷を最小限に抑えます。たとえば、エネルギー効率の高い宿泊施設や、マイボトルの利用促進、野生動物との適切な距離の保持などが含まれます。

② 社会・文化への配慮
訪問者が地域の伝統文化や住民の生活を尊重し、対等な関係を築くことが求められます。地域住民が観光によって孤立するのではなく、誇りを持って文化を発信できる環境が理想です。

③ 経済的な持続可能性
観光による収益が地域経済に還元される仕組みが重要です。
地元のガイドや農家、手工芸品の作り手と連携したツアーなどは、その一例です。

なぜ今、サステナブル・ツーリズムが注目されているのでしょうか?

その理由の1つとして現在オーバーツーリズム(観光客の過剰集中)による環境破壊や、気候変動の懸念があります。

SDGs(持続可能な開発目標)でも、観光の役割は明記されており、世界中で国や地域、企業がそれぞれに応じた取り組みを始めています。

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サステナブル・ツーリズムは「制限」ではなく「選択」

よく勘違いされるのが、サステナブル・ツーリズムは「不便な旅」や「我慢を強いられる旅」という意味ではありません。
むしろ
「自然の音に耳を傾ける」
「地元の人の話をじっくり聞く」
「余計な消費をしないことで、心が満たされる」
といった、本質的な豊かさを再発見するための選択になります。

次の旅行先を選ぶとき、「この旅が誰かの暮らしや未来にどう影響するか」という視点を一つ加えるだけで、旅の価値は大きく変わります。
それが、サステナブル・ツーリズムを考えるキッカケになります。

それでは全国のおすすめサステナブル・ツーリズム人気施設を紹介します。

北海道・ニセコ町:環境と共生するリゾートの最前線

北海道ニセコ町は、日本におけるサステナブル・ツーリズムの先進地なんですね。
町ぐるみで環境保全に取り組み、再生可能エネルギーの活用や地域内経済の循環を促す宿泊施設が集まっています。

たとえば「オフグリッドゲストハウス GURUGULU」は、一日一組限定で、自家発電と井戸水による“完全自給型の宿泊”を体験できます。

オフグリッドとはどういう意味なのか。オフ=グリッド(英語だとoff-grid)で電力、ガス、水道などライフラインに依存せず、自給自足の生活をすることです。

木のぬくもりに包まれた空間で、持続可能な暮らしのリアルを感じることができます。

また「木ニセコ」は都市型高級ホテルでありながら、プラスチック排除や電動シャトルの運行を通じて環境意識の高い旅を提供しています。
都市と自然が調和するこの地域は、初心者から上級者までサステナブルな旅に挑戦しやすい場所です。

京都市:文化と環境保全の両立を実現する歴史都市

古都・京都では、サステナブルな観光と伝統文化の保護が同時に進められています。観光客の多さが課題となる中、ホテルや旅館がグリーンキー認証を取得し、給水スポットや再生素材の導入が進んでいます。

最近では、宿泊費の一部を寺社の文化財修復費に充てる宿泊プランも登場しました。単に泊まるのではなく、地域文化の継承に参加するという新しい滞在スタイルが注目されています。

教育旅行や修学旅行でも、エコ学習と文化体験を融合させたプログラムが人気を集めており、子どもから大人まで幅広い層に支持されています。

沖縄・やんばる:自然の中で暮らしを見つめ直す体験

沖縄本島北部、やんばるの森は、ユネスコの世界自然遺産にも登録された貴重な生態系を有する地域です。そこに建つ「Treeful Treehouse」は、まさに森と一体となった宿。

太陽光発電を活用し、自然との共生を前提とした設計が特徴です。夜は一切の人工光から離れ、虫や風の音を聞きながら過ごす静かな時間は、都市では得られない深い癒しを与えてくれます。

一方、「ザ・リッツ・カールトン沖縄」はラグジュアリーホテルながら、コンポストや有機農法による野菜づくりなど、宿泊者が環境に貢献できる仕組みを導入しています。

追伸:沖縄の自然がいっぱいのやんばるに2025年7月25日オープンするジャングリアも楽しみですね。

岐阜・白川郷:文化遺産を守る住民主体の観光モデル

白川郷では、合掌造りの集落を守るために住民が「売らない・貸さない・壊さない」という三原則を掲げ、観光と共に暮らしてきました。歩行者専用ルートの整備や完全予約制の導入により、観光公害を未然に防ぐ工夫がなされています。

また、宿泊者が使う薪は地元の間伐材を使用。宿自体が山や森とつながっていることを、五感で実感できる空間です。地域住民の知恵と努力が、サステナブル・ツーリズムの原点を示しています。

神奈川・三浦半島:都市近郊で体験できるエコ旅

都心から電車で1時間ほどの三浦半島は、気軽にサステナブル旅を体験できる希少なエリアです。猿島ではゴミの循環処理と環境学習ツアーを組み合わせたエコ体験が用意され、子ども連れにも最適です。

また、地域独自のMaaSアプリでは移動中のCO₂削減量が可視化され、移動手段そのものが「選べる環境貢献」になります。地元の漁師と協力した海洋プラスチック回収体験など、実践的なアクティビティも揃っています。

関東近郊・秋川渓谷:子どもと一緒に自然とふれあう休日

東京都あきる野市にある秋川渓谷は、自然豊かな渓谷と都心からのアクセスの良さが魅力です。小規模エコツアーでは、子ども向けのクイズや物語形式で地質や水の循環が学べる仕掛けがあり、家族旅行にぴったり。

渓谷周辺には地産地消にこだわった小さなカフェも点在し、スタンプラリー形式で地域経済に貢献できる仕組みも。宿泊施設の多くが少人数対応で、静かに自然と向き合う旅が楽しめます。

子連れエコ旅のコツとおすすめエリア

子ども連れでサステナブルな旅を計画する際は、「短時間」「体験重視」「予備プランあり」の三点がカギになります。

群馬県神流町の「川の音」では、家庭ごみの分別や太陽光の活用などを“遊びながら学べる”工夫がなされており、自然と一体化した生活体験が可能です。

また、観光庁の表彰を受けた教育型ツアーでは、事前にワークシートが配布され、旅の前から子どもと一緒に学ぶ準備ができます。こうした取り組みは、家族全体の意識を高めるきっかけにもなります。